配偶者の税額軽減の適用がないニ次相続には特に有効?
税率の高い贈与税が、税率の低い相続税よりも有利な場合とは
下の表は、27年1月1日以降発生する、相続税と贈与税のそれぞれの金額と税率を表しています。ご覧いただくとおわかりいただける様に、同じ金額で比較した場合には贈与に係る税率の方が圧倒的に相続の税率よりも高くなっています。この事から、生前対策とはいえ基礎控除額(110万円)を超える様な多額の贈与は、相続よりも多くの税金がかかるのでやめた方が良い・・という話を良く耳にしますが、実際はどうでしょうか?ちょっと検証してみましょう。
※贈与については直系尊属から20歳以上の者への贈与の場合
贈与税 | 税率 | 相続税 |
200万円以下 | 10% | 1,000万円以下 |
200万円超 400万円以下 | 15% | 1,000万円超 3,000万円以下 |
400万円超 600万円以下 | 20% | 3,000万円超 5,000万円以下 |
600万円超 1,000万円以下 | 30% | 5,000万円超 1億円以下 |
1,000万円超 1,500万円以下 | 40% | 1億円超 2億円以下 |
1,500万円超 3,000万円以下 | 45% | 2億円超 3億円以下 |
3,000万円超 4,500万円以下 | 50% | 3億円超 6億円以下 |
4,500万円超 | 60% | 6億円超 |
相続税計算で適用される最高税率と贈与税の実効税率との比較
どちらが本当に有利なのか?という判断は、税率の比較だけで判断できるほど単純ではありません。この場合、相続税で適用される最高税率と贈与税の実効税率での比較をすることでおおよその判断が可能となります。
仮に、課税遺産総額(基礎控除額等を控除した後の金額)が1億円で、相続人が長子1名である場合を考えてみましょう。上記の表より1億円以下の相続税の税率は30%です。この内、生前に1千万円を贈与した場合、相続税と贈与税の両方の税額にその後どう影響してくるでしょうか?
1千万円の贈与に係る贈与税率は上の表の通り、税率だけ見れば相続税と同じ30%です。
(相続税への影響)
- 課税財産1億円のまま・・・相続税は2,300万円
- 1千万円贈与して9千万になると・・・2,000万円 300万円下がりました。
※税率が30%ですから、1千万×30%で税額が300万減った・・という訳ですね
(一方で贈与税への影響)
- 1千万円の贈与に対する贈与税・・・177万円
あれ?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうです。贈与税は、税率が30%になっているからといって、贈与した金額の30%が丸々納税額になる訳ではないのです。
実際に贈与した金額が1,000万円で、贈与税は177万ですから、実効税率は17.7%程度です。この実効税率ベースで相続税の最高税率(今回は30%)と比較し、相続税率を上回らない範囲であれば、贈与の方が有利という事になります。
この計算を贈与税額に応じた一覧にまとめると以下の様になります。
単位:万円
贈与額 | 相続税 / 税率 | 贈与税 / 実行税率 | 合計 | 有利判定 | ||
0 | 2,300 | 30% | 0 | 0% | 2,300 | - |
500 | 2,150 | 30% | 49 | 10% | 2,199 | 贈与 |
1,000 | 2,000 | 30% | 177 | 18% | 2,177 | 贈与 |
2,000 | 1,700 | 30% | 586 | 29% | 2,286 | 贈与 |
3,000 | 1,400 | 30% | 1,036 | 35% | 2,436 | 相続 |
※小数点以下の端数は四捨五入で表示しています
いかがでしょうか? 相続税の最高税率30%を、贈与税の実効税率が上回った時に、何もしなかった時の税額2,300万円を超え、贈与をした方が不利になっている事がご確認いただけるかと思います。
相続税には、財産の形成に大きく寄与した配偶者の相続分については、税額軽減の措置が設けられています。その為、配偶者が相続人になるケースの多い一次相続時点においては、財産を配偶者へ集めれば税額の負担を大幅に減少させる事が可能です。しかし二次相続ではそうはいきません。その為、今回の様な贈与税の基礎控除110万円を超えるような多額な贈与を、短期的な視点で生前対策として検討する場合には、一次相続よりも二次相続の方が有効だといえます。
上記計算は一例です。 課税遺産総額の金額や生前贈与する人数によって、結果が異なりますので、詳しくはお問い合わせ下さい。
上記を踏まえ、相続税対策を検討される方は、「相続税対策」をご参照ください